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IT業界は何を勘違いしたのか

ソフトウエア業界、あるいは最近の呼び名ではIT業界と呼ばれる事が一般的なのかもしれないが。
1980年代この業界に身を投じた者としてはただその変化の凄まじさに呆れるほどなのだ。
フト思い返すと、1980年代から現在迄現役で活躍している会社、個人が本当に稀少な事に改めて思い至る。
その数少ない会社や個人の筆頭にAppleと創業者スティーブ・ジョブズ氏を挙げる事が出来る。
好敵手のMicrosoftとその創業者ビル・ゲイツ氏は既に一線から退いており、後を託されたスティーブ・バルマー氏の努力にもかかわらずMicrosoftの今後に関しては明るい展望を語る事はなかなか難しいと思える。
こうした事からも1980年代から引き続き活躍している会社と個人の代表としては、抜きん出てAppleとスティーブ・ジョブズ氏の姿は大きく見えるのである。
日本には創業100年を誇る企業の数が世界と比べて断然多いのだという話を聞いたことがある。
そうした見方からするとたかだか30年程度の事で驚くに当たらないのかもしれない。
しかし、事ソフトウエア業界、IT業界に限ってみればどうだろうか。
総合電機メーカーの一部門としてやって来た会社を除くと独立系ソフトウエア、IT企業でこの30年間継続的に活動し続けることが出来た企業はほんの一握りに過ぎない。
創業100年を誇る企業が多数存在する日本の企業風土にあって何故たかだかこの30年を生き延びることが出来なかったのだろうか。
日本のIT企業はどんな間違いを犯したのだろうか。
Appleとスティーブ・ジョブズ氏が今もなお、先頭を走り続ける事が出来るのは何故なのだろうか。
その秘密は何処にあるのだろうか。
Appleとスティーブ・ジョブズ氏がパソコンの創始者の一人としてビジネスをスタートさせたのはよく知られた事実だ。
パソコンの開発は1976年のAppleⅠと大きな成功の糸口となった1977年のAppleⅡの開発から始まった。
その後Appleとジョブズ氏は様々な機種のパソコンの開発に勤しんだ。
ムーアの法則そのままに性能が向上するCPUを利用するそうしたパソコンの開発はハードウエアとソフトウエアを一体として開発するAppleに重い負担を課すこととなった。
一方、ライバルMicrosoftとビル・ゲイツ氏はハードウエアの開発には基本的に関わらず、基本ソフトに注力してそのシェアを奪った。
パソコンと呼ばれるコンピュータ分野におけるシェア争いではAppleはMicrosoftに完敗することとなった。
一時、ジョブズ氏がAppleから追い出されたのはその結果であり、当時Appleは、あるいは最早単独では会社を継続してゆくことが不可能なのではないか。とさえ、囁かれたものだ。
しかし、ジョブズ氏は1996年再びAppleに復帰する。
ジョブズ氏は何故復帰し今日のiPhone,iPadを中心とする新製品を世に問うことが出来たのだろうか。
ひとことで言うと、その鍵は「ものを創ることではなく」「サービスを創ること」にその視点があり、その視点は彼にあっては揺らぐことがなかった。と言えるだろう。
「ものを創る」ということで言えば、その最良の「もの創り」の旗手IBMは少し遅ればせながら益々明確になりつつ有ったAppleの「サービスを創る」戦略とその成功を横目に2004年暮パソコン部門を売却し「もの創り」から撤退した。
IBMの撤退後、日本の会社なら「もの創り」は可能なのだと根拠なく決断を引き伸ばした日本の大方の会社もまた次々とパソコンの開発から手を引くこととなった。
実は、「もの」とは、ハードウエアに限ることではなく、ソフトウエアもまたもの創りと同じ思想で行われたものは「もの」なのだ。
AppleとMicrosoftの戦いのその後の経緯はその事を明確に示すものだ。
日本のIT産業の破滅的な状況は当初は「もの創り」に固執し、ついで「もの創り」と同じ視点でのソフトウエアに関わったことなのだ。
そう言えば、ある大手電機企業はその昔、「ソフトウエア工場」と言っていたことを思い出した。
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電子文書で紙に足と羽が付いた

紙の文書媒体の電子化が大きな関心を呼んでいる。
ノートPCの普及によって電子文書のモバイル化が進んだが、アマゾンのキンドルやアップルのiPadの出現は一層その流れを加速した。
こうした事情は、最新のインターネット利用技術クラウドの出現と共にますますその勢いを増している。
例えば、Appleの最新の多機能電子端末iPad が従来、紙を中心に利用されてきたドキュメント利用環境にもたらす変化とは具体的にどの様なものとなるのだろうか。
電子ブックや電子文書とは、それは紙ベースのドキュメントがディスプレー上で閲覧可能となる事にとどまらない。
まず、電子文書は例えて言えば、紙ベースのドキュメント類に「足」が付いていて、自由に歩き回る様になる事だ。
電子文書が歩き回る空間はヒトの足とは異なり、大地や道路では無く、電子空間、インタネット空間であり、その速度はヒトの感覚からすればほぼ光の速さに匹敵する。
インターネットにパソコンが繋がり、インターネットに接続する巨大な規模の様々なサーバー上のコンテンツが利用可能となる事で世界は音をたてて変化し始めた。
そして今や、インターネットに接続される端末機器はPCや携帯電話を含む多様な端末機にとどまらず、様々なセンサーを内蔵する機器類もその対象となっている。
その結果、携帯電話によってヒトは常時ネット環境に接続されリアルタイムに電子仮想空間の膨大なコンテンツにアクセス可能となった。
かってパソコンの草創期に、「おい、坊やそんな玩具みたいなコンピュータで何が出来ると言うんだね」と問われて、The Computer is an Amplifier for Your Brain(パソコンは頭脳の増幅器なんだ)とその未来を語った者たちには、その言葉が今やまさに実現しようとしている事を実感するだろう。
今やヒトは携帯電話さえ持っていれば、分厚い広辞苑をいつでも参照することが出来、地図がなくともGPSで自分の場所を、行先までの経路を素早く表示することが出来る。
問題の可決へのヒントは強力な検索システムがWebの情報の海から様々なアイデアを拾いあげてくれる。
読む事のためのドキュメントは、電子化させることで「足」を持ち、電子仮想空間を駆けまわり、ヒトとヒトを再度結びつけその結果素早く新たな集合知を生成する。
これはもはや紙ベースのドキュメントとは異なるものだ。
だからドキュメントの電子化にとって最大の、最重要な課題とは「足」を獲得したドキュメントが誰かに盗まれる、無断で利用される事への危惧とその対策ではなく、「足」を持ったドキュメントが新たに生成するヒトとヒトの関係から、全く新しい「知」をどうしたら滾々と湧き出る泉のように創造することが出来る環境を整える事が出来るかにあるのではないか。

プロフィール

chinshimokkou

Author:chinshimokkou
坂井 茂
株式会社コミュニケーションサイエンス代表

パソコンソフトウエア業界の草創期から活躍。
大学卒業後、日本経済新聞社勤務、株式会社クイック設立の為出向。
アスキー・マイクロソフトの設立に参加。 日本経済新聞退社。
アスキーマイクロソフト社副社長、マイクロソフトウエアアソシエイツ代表取締役副社長、マイクロフォーカス株式会社代表取締役社長を歴任。
日本で最初のコンピュータソフトウエア専門ショップ「ソフトショップ」を設立。
その後株式会社コミュニケーションサイエンス代表取締役社長。
昨年、社長を後任に託し会長職に就任。

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